コラム / 一建塗装の現場から

倉庫に眠る「機械遺産」
──先代から受け継いだ昭和の塗装機

有限会社一建塗装 岐阜県恵那市・中津川市


APQ-I エアレス塗装機 全体像
型式プレート APQ-I
製作番号プレート

弊社の倉庫の奥に鎮座している1台の塗装機があります。

サビと塗料の染みに覆われた鋳鉄のボディ。それでも、プレートに刻まれた文字はしっかりと読める。

型式APQ-I
製造旭大隈産業(現・旭サナック株式会社)

先代から「大事にしておけ」と言われていたこの機械の正体を、あらためて調べてみました。

日本の塗装業を変えた、国産エアレスの草分け

機械遺産 第92号(2018年認定)

日本機械学会は2018年、旭大隈産業が開発・普及させたエアレス塗装機を「機械遺産 第92号」に認定しています。

戦後のアメリカで生まれたエアレス塗装技術を日本に持ち込み、国内事情に合わせてコンパクト化・低価格化を実現。1962年(昭和37年)にほぼ国産化を完了したこの技術は、その後、建築・造船・車両・道路舗装など、あらゆる塗装現場に広がっていきました。

現存最古の機体は現在、旭サナック株式会社のショールームに保存・展示されています。

そして——その同型機が、うちの倉庫にあるのです。

昔の機械は、なぜこんなに堅牢なのか

現代の機械と比べると、APQ-Iは圧倒的にシンプルです。複雑な電子制御も、精密センサーも何もない。空気圧で塗料を加圧して押し出す、ただそれだけの仕組み。

だからこそ、何十年経っても「少し手を入れれば動く」状態を保てる。消耗品を交換し、パッキンを締め直せば、昭和の機械がまた仕事をする。

プレートには今も「使用空気圧力は7kg/㎝²をこえないこと」との記載が残っています。当時の職人が確認していた数字が、そのまま残っている。

“重さ”を引き継いで、今日も塗装屋を続ける

一建塗装は、岐阜県恵那市・中津川市を中心に外壁塗装を手がける、小さな塗装店です。

派手さはないけれど、先代から受け継いだ道具と技術と、地域への責任感を持って仕事をしています。

この先この機械を現場で使う機会はもうないかもしれませんが、倉庫に大切に置き続けるつもりです。

塗装屋がこの地で積み重ねてきた時間の、証人として。


 

ご参考

日本機械学会「機械遺産 第92号 エアレス塗装機」

https://www.jsme.or.jp/kikaiisan/heritage_092_jp.html